王子様かしら…

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「樹里、いま車だったよな?社長のお迎え?」 「うん。双子の兄も一緒だった」 「キャーッ、双子っ!樹里イケメン天国でご帰宅だったの?」 真澄ちゃんが身を乗り出し、テーブルがガタッと揺れた。 「お母さん、落ち着いて。樹里、その話は食後にしよう」 「そうだね。真澄ちゃんが食べられそうにないよね…ふふっ」 「樹里も尋問にあって食べられないよ。新キャラ登場だもの」 真矢に言われ、その通りだと思う。天野学の件は真澄ちゃんたちに当然伝えた。そしてスーツのイケメンがJOYの社長だったことと、私を病院で見かけて知っていたことを伝え、付き合うことも話した。 偶然とか必然とか、奇跡とかキャッキャッと騒いだ真澄ちゃんだが、イケメンのストーリーを妄想して楽しんでいるだけだ。彼女は私が男性と深い付き合いをしたくないことを真矢経由で知っているので、会わせろとは言わない。家族に紹介して家族公認という感じになるのを避けているのだろう。 そしてその天野学の話をした時、二郎さんと陸斗、真矢はキャッキャッと騒ぐ真澄ちゃんとは違った反応を見せた。アルバイトの帰宅中に警察へ通報するほどのことがあれば家族へ一言説明して行くのが筋で、そんな日に種明かしの話があったとしても真夜中の12時前に送ってくるなんて非常識だ。自分たちはその日のうちに何も知らないで、ただ同僚と仲良く出掛けていると思っていたのに警察沙汰になっていたなんて社長の神経を疑う。それに忙しい時期だと言っても4年間も接触して来ないなんてうさんくさいとバッサリと切り捨てたのだ。
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