王子様かしら…

9/10
5767人が本棚に入れています
本棚に追加
/183ページ
「そうなのかな…店からここまですぐだから…印象は声、話し方かな…輔にね、食事に誘われたけどカレーが残っているから断ったの」 「あらら…色気のない話ね」 真澄ちゃんがケラケラと笑いながら、さきいかの袋を開ける。食後のテーブルの真ん中にさきいか。真澄ちゃんと真矢が缶ビールを半分ずつ。二郎さんと私は小さな冷酒グラスを前に日本酒を少し。色気のある話よりくつろげるこの時間がいいじゃないか。 「そしたらね、昴にJOY以外でもアルバイトしてるかって聞かれたの」 「うんうん、それで?」 「してないってもちろん答えるでしょ?そしたら、休みには料理したりして…樹里はやりくり上手なんだねって昴が言ったの」 「あらっ…」 「普通なら…いつもならそれで終わっていたと思うんだけど、家族が水道光熱費を出してくれてるから特別やりくり上手ってことではない…と…」 「…樹里が言ったの?」 「真矢もびっくりするよね…私もびっくりしたよ…家族のこととかってあまり話さないし」 「だよね…彼の空気が引き出したんだよ、きっと」 妙に納得顔の真矢に真澄ちゃんも賛同する。二郎さんは、とても真剣に私に聞いてきた。 「家族のことは社長に話している?」 「この家に伯母家族と隣同士ということ、おばあちゃんが亡くなっていることくらいかな…それは話さなくても知ってたことか…」 「あははっ、樹里…それは挨拶だけするご近所さんと同じ情報量だわ」 また笑う真澄ちゃんに、真矢がきっぱりと言い放った。 「最初から言ってるでしょ?社長はその程度の男だって。樹里のことをどうこう出来る器でない」 「でも、熱烈な告白だと思わなかった?樹木の天使なんてなかなか言えないわよ」 「お母さんも昔からよく知ってるでしょ?樹里の容姿は日本では目立つの。目立つだけでなく実際そこらのモデルより綺麗でしょ?どれだけ熱烈に告白されようが、樹里の中身を全く知らないまま告白してきたんだもの。ナンパとは言わないけど、樹里に一目惚れしてくる男と同じレベルだと私は思う」
/183ページ

最初のコメントを投稿しよう!