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「真矢の言うこともわかるけど…きっかけは何であれ、樹里がちゃんと好きな人と穏やかな幸せを手に入れてくれればそれでいい。それはまだ出会っていない相手かもしれないから、樹里は今すぐ慌てて付き合うとか別れるとか…私たちの言ったこととか、気にしないで思うようにすればいい」
真澄ちゃんはそう言ってから、絡まったさきいかの塊を口へ入れる。
「明日、真澄ちゃん自転車乗らないでしょ?借りるね」
「土曜だからねーどうぞ」
土日は二郎さんが休みだから一緒に車で行動する真澄ちゃんの自転車を借りて店へ行く。世間は春休みに入り、花粉の飛び散る中、皆お洒落をしてお出掛けのようだ。私は今日もいつもと同じようにスニーカーとパンツ姿だ。あれ以来、ストーカーは出現しておらず輔に感謝だ。
そして退勤時刻になり駐輪場へ向かうと
「…お疲れ様…樹里」
昴が薄手のロングブラックコートを完璧に着こなしポールにもたれていた体を起こした。
「こんばんは…?」
「うん、こんばんは。僕が一緒に歩いてもいいかな?」
「…」
どういうことかな?
「昨日もう少し樹里と話したいと思ったから…構わない?」
このやけに静かなゆったりとしたリズムが私の鼓動を乱すのだろうか?
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