天使でなくプリンセス

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天使でなくプリンセス

「昴」 樹里を家の前で降ろすとすぐ、輔が僕を呼ぶ。 「人見知りはどこへ行った?」 「…樹里は初めて会った感じではないかな」 「話すのは初めてだろ?」 「うん」 「なのに?」 「…ずいぶんと樹里を見てきたからね…彼女が僕の不快な距離にずかずかと入って来ないことがわかっているから大丈夫なのかも」 気持ちを打ち明けて共有するだけが親しさではないと思うのだが、人は興味本意で他人のことを知りたがる。人との心の距離感は人それぞれなのに。 「家のこと少し言ってたな…」 輔は独り言のように言い窓の外を見ている。 「家の話はしないのに…」 「樹里は静かに心地よい音色で話をするね」 「ああ…それがたまに感情を隠して彼女の本心がわからない。少し昴と似てるな。ただ昴はカタワレだから本心がわからないってことにならないだけ」 「…そう」 相づちを打ったつもりだが 「何か言いたいんじゃないのか?」 鋭い弟に聞かれた。 「…うーん…そうだね…」
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