天使でなくプリンセス

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「人間」 「昴?ふざけてるのか?」 「…至極真面目…説明するのは難しいよ」 「その話なのに説明せずにどうする?とにかく言葉にしろ。そうすれば俺が昴の言いたいことは読み取れる」 「うん…心に何かが足りないから…体が軽くて脆くて儚くてすぐに吹き飛ばされそう…足りないものが何かはわからないけど、家族には感謝すると言っていたから今の現状ではなく、幼い記憶や経験で何かあったのかもしれない。輔が初めて見た光景も、僕には天使が舞い降りたのではなく…自分が脆く壊れてしまいそうなのを…ふわふわと風に連れ去られそうなのを…大地を踏みしめて両手を木につけて森羅万象に祈りを捧げる人間らしい姿に思えるんだ」 輔はそっと目を閉じてしまった。 「彼女は人間らしく生きるために…置いてきた何かを探しているのか…置いてきたせいで空いた穴を塞ぐ何かを探しているのか…静かだけど懸命に力をふりしぼっている人間。あの容姿だから苦境に立たされていても…そうだね…プリンセス…天使じゃなく、僕にはプリンセスに見えるかな…プリンセスは立派な人間でしょ?」 返事をするつもりのなさそうな輔を車内に置いて部屋へ上がる。一人で考えたいのかもしれない。 部屋へ着くと、僕もカレーを食べようとレトルトカレーを棚から取り出す。カレーを温めながら、今日の樹里の驚き具合を思い出し頬が緩む。僕の存在さえ伝えていないなんて酷いじゃないか、輔。でも樹里は、店でも道でも会ったと僕を覚えていてくれた。そりゃ、頻繁に会っていたからね。直接彼女と話していないのに彼女の声がすぐに思い出せるくらいに会っていたんだ。
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