天使でなくプリンセス

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輔は対外的な仕事をするためスーツだが、僕はカジュアルな格好で職場へ行く。副社長となってはいるが何でも屋のようなものだ。経理、輸入、広報…他社の人には会わない。店舗の抜き打ち視察なんかにはスーツじゃない方がいいというメリットもある。今日もシャツとカーディガンに…朝夕は薄いコートが必要だ。 昨日言葉を交わした樹里ともう少し話したい。自分の気持ちを確かめたい。僕が自分から人に会いたいなんてことは…今までにあっただろうか? 今日は自転車だと言っていた樹里を駐輪場で待つ。6時までか7時までか聞いていなかったので6時前から待っていると、樹里が出てきたのは7時10分くらいだった。 「…お疲れ様…樹里」 今日も驚かせてごめんね…でも僕も今日じゃなきゃダメなんだ。 「こんばんは…?」 「うん、こんばんは。僕が一緒に歩いてもいいかな?」 「…」 今度は困惑だね…樹里はわかりやすいね。輔は本心がわからない時があるって言ったけど、話してなくても樹里は話してるよ。 「昨日もう少し樹里と話したいと思ったから…構わない?」 頷いた彼女が自転車を出すと 「僕が押そうか?」 「ううん、大丈夫」 「そう…自転車より少し時間かかるけど問題ない?」 「それは大丈夫」 そう答えた樹里が僕を見上げた。 「…昴は…今日はお仕事?それとも…お休み?」 僕のことを聞いてくれるんだね、樹里。
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