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ガードレールに軽く腰掛け、樹里と視線を近づけると引いた手はそのままに、反対の手で止まらぬ滴を拭う。
「止まんないね…思い出しちゃった?」
止めようとしているのだろう。樹里は口をきゅっと結びへの字にして喉の奥で音を殺している。そうして首をブンブンと横に振った。
「思い出したんじゃないか…悲しい?」
ブンブン…
「嬉しいの?」
コクン…
「そうか…二人とも幸せだってこと思い出した?」
コクン…
「涙止めないで…思いきり幸せなこと思い出して泣こうか、樹里…僕が付き合うよ、何時間でも」
そう言い、さらに引き寄せた彼女の頭を自分の鎖骨辺りにきゅっと抱き寄せ、もう片方の手でゆっくりと背中を撫でる。僕が座ってこれだから…結構小さいのか…悲しい涙でなく幸せの涙…さすがプリンセスだ。何度でも泣いていいよ…僕がずっと付き合うから。僕はもう確信したよ…プリンセスに堕ちた。
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