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少し風が出てきたな…樹里の背中に手を添えたまま、ゆっくりと立ち上がり片手ずつコートを脱ぐと樹里の肩に掛けた…引きずってる…クスッ…
「うん?樹里?笑った?」
樹里は鼻をすすり上げながら僕のコートを自分の頭まで引き上げる。
「…これで…引きずらないもん」
「あははっ、樹里…それいいね。そのまま歩く?ハナタレもバレないよ」
「昴…ありがとう」
「うん、いつでもいくらでも」
「…おばあちゃんと私の2年間…おばあちゃんの最後の2年間…幸せって言ってくれてありがとう」
「そう思ったから。今度、気が向いたら僕にターシャの話を聞かせてよ」
「ふふっ…長いよ?22年間…22年の間ずっと一緒だったから」
「1日1話でたった22年で終わってしまうよ?人生まだまだあるから聞ける」
22年間か…樹里が生まれてからターシャが亡くなるまでずっとってことだね。
「涙はもういいの?」
「もう顔かぴかぴに乾いた」
「ほんと?」
コートをかぶった顔を覗き込み、そっと頬を撫でる。
「可哀想なほどかぴかぴ…」
「泣いて疲れちゃった」
「明日は休み?」
「うん。…えっ?昴…私のシフト知ってるんじゃないの?」
「知らないよ」
「…じゃあ…今日何時から待ってたの?」
「樹里ちゃーん、そんなところに気がつきましたか…姫は男を待たせたらいいんだよ。さあ、送るよ」
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