雨の日のおむかえ。

2/3
20人が本棚に入れています
本棚に追加
/3ページ
 黄色のレインコートを着せて大人用の傘をさし、「今日は歩いて帰ろうね」と言いなだめるも、彼はいやいやと首を振り、一向に聞きいれてくれない。こまったな……。  試しにまーくんを抱っこしてから傘をさして歩く。ばらばらばら。傘を打つ雨音を聞きながら一歩一歩を進んだ。しかし、五メートルほどで力尽きた。  四歳の彼は十九キロ、そこそこ大きい。傘をささずに両手で彼を支えるのは可能だが、片手は無理だ。腕が三本あれば息子をぬらさず、且つ、抱っこで帰れるのに。 「ママ~、抱っこ!」  再び地面に足をつけたまーくんがとうとうぐずりはじめた。  私は黒っぽい雨雲を恨めしく思った。あちらこちらにできた水溜りに丸い輪っかを作る雨は、いまだに継続中だ。  どうしよう。どうやって帰ろうか。私の傘に入ってもらって、なお且つまーくんの足で歩かせるには……?  頭をかかえて考え、ふと妙案がひらめいた。 「どうしよう、まーくん。ママ、家までの道がわからなくなっちゃった!」 「えぇ??」 「お願い、まーくん。ママを家まで連れて帰って?」
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!