回しぐるま

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今や希少な存在となった友里恵は、サービス業に就いているため休日は平日になる。和香子の夫は土日が休日のため、夫に麦を預けて友里恵と会うということも難しい。 つまり友里恵とのランチを実現させるためには、友里恵と和香子の母の勤務シフトを調整しなければならず、何週間も前から予定を立てておく必要があった。 娘は愛しすぎるくらいに愛しい。我が子のためなら命さえ惜しくないと本気で思っている。 一方で、どれだけ入念に事前準備をしようとも、娘の体調ひとつでいとも簡単にすべての計画が覆されることへの絶望感に、和香子は打ちひしがれるのだった。 しかしいくら嘆こうとも現実は変わらない。まずは友里恵に現状を報告することが先決だった。 小児科の待合い室の片隅で、当日になってランチをキャンセルすることへの謝罪と、事の顛末を自分なりに丁寧に、入念に言葉を選んで作成したLINEを友里恵に送信したのが午前9時12分。 既読はすぐについた。
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