回しぐるま

和香子のネガティブ思考は、1度走り出すと止まらない。

それは回し車の上のハムスターのように、いつまでも同じ場所でぐるぐると回転しているだけで、どこにもたどり着かない。

和香子自身もわかっている。痛いほどわかっていて、それでも止められないからやっかいなのだ。

目下、和香子のネガティブを大爆走させている原因は、幼なじみである友里恵の既読無視。

和香子は中学生ではない。高校生でもない。友人関係に重きを置きがちな、多感なティーンエイジャーだった時代はとうの昔。

出産を機に、現在は専業主婦として生活している30代半ばの成人である。ごく一般的な社会人として、酸いも甘いもざっとひと通りは経験してきたつもりだ。

そんないい大人が、LINEの返信ひとつにうじうじと悩んでいる。

あまりのばかばかしさに自己嫌悪がつのる。こんな幼稚な自分だからこそ、友里恵にも愛想を尽かされたのではないのだろうか。

LINEではなく、電話で謝罪すべきだったか。自分なりに心を込めて練ったつもりではあったけれど、選んだ言葉がまずかっただろうか、それとも絵文字の使い方が気に障ったか、いやしかし……

ぅんぎゃあ、うんぎゃあ、うんぎゃあああああああああああ