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父が亡くなり実家の後片付けをしていた。
捨てられない性分の母が亡くなった時より、ずっとこざっぱりとした部屋の中、私は溜まっていたダイレクトメール片手にただ立ち尽くしていた。
古いカーテンはまるで昭和時代のホームドラマに出てきそうだし、変に凝った壁紙は凹凸があってこれも最近ではお目にかかれない代物だ。
サッとカーテンを開けると、傾きかけた冬の陽射しが部屋に射し込んだ。スポットライトのようなそれにキラキラと埃が舞っていた。
幼少期の記憶が蘇り、こんな陽射しの中、図書館で借りてきた本を読んでいる私が部屋で真面目な顔で座っていた。どんなに寒くてもスカートは膝上で膝小僧が出ている。
「寒い? ストーブ点けようか?」
母がキッチンからこのリビングに入ってきて言う。私は顔も上げずに「うん」とだけ。
カーテンから視線を動かし、あれから随分と時を経ているのに現役のまま待機しているダルマストーブを見た。屈んで灯油の残量メモリをチェックする。灯油がまだ残っている。幾年振りか、マッチを擦ってダルマストーブを点けてみる。数回のチャレンジ。そして熱を放つダルマストーブ。
「点けたわよ。ストーブには触らないでね」
母が言う。何度も聞いたセリフに返事なんてしない幼い頃の私。
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