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なんてことだ。俺はあまりのことに目眩を覚え、再び土くれにうずくまりそうになった。軽蔑したように女どもがざわめき、嘲りの言葉を俺に放る気配がする。
「我々はお前を見て話し合った。仲間たちと同じく、すぐに殺すべきとの意見が大半だった。だがな、考えてみれば、我々の村にはいま、男がまったくいない。皆、殺されたからな。これでは村の日常にも差し障る。ならば、折角生き残ったお前さんを最大限に使わせてもらおうか、と最後には意見が一致したのだよ」
その言葉に、俺はようやく自分が生かされて、ここにいることに合点がいった。
「……俺を奴隷にするつもりか……」
「もちろんだよ。いいや、奴隷などというお上品な立場に甘んじられると思わない方が、身のためだな。さて、お前の名は何という」
「……マルクだ」
自らの名を答える俺の胸を、ひたひたと絶望の暗い波が浸していく。
最後に女どもは口々に俺に叫んで、小屋を出て行った。
「マルク、これは我々の復讐だ、覚悟するといい」
「せいぜい死ぬまでこき使ってやる」
「その足輪を外してやる日が来るなど、期待するなよ」
女たちの罵りが、鎖に繋がれた俺の耳に残響となってこびりつく。やがて、扉は乱暴に閉じられ、小屋の中には俺ひとりが残された。
俺は獣のような言葉にならぬ咆哮を、耐えきれずに口から漏らした。
それが聞こえたのか、小屋の外から、どっと女たちが嗤い声を上げたのが、微かに、俺の耳にまで届いた。
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