零鬼 九鬼堂

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 京都の中心街、そして観光客が押し寄せて人の波が無いときがない場所。それが寺町商店街だった。そんな商店街の路地(ろおじ)にその店はあった。  ここ半年ほどで出来た店だった。  開店前だというのに、外には人が何人か中の様子をうかがうようにして立っていた。どの客も若い女性だった。  店の中ではすらっとした背の高い店員が商品を陳列させていた。  細い切れ長の目に中性的で凜々しい顔立ちだった。薄い金髪を一つにくくり、薄いブラウンの右目に左目は白い眼帯をしている。  店に来る客の中には彼目当ての人が居てもおかしくないくらいのイケメンである。  外の様子に、彼は少しため息を漏らす。  監視されているようでやりづらいのだ。おそらく、店長が昨夜流したSNSを見ての客がいるのだろう。新作を作ると徹夜で作業したあげく、今は二階の作業場でバタンキューと寝ている。
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