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「信じられない……」 噴煙が上がる中、目を細めて覗き込むと、泉が窓ガラスに張り付いていた。 「これはコゾノメクラチビゴミムシかもしれない……!大分にしか生息しないと言われていて、すでにレッドリストには、絶滅種として指定されてるのに……!」 何かをブツブツと呟きながら、嬉しそうにガラスに張り付いた木の根っこを見つめている。 「バカ!泉……!さっさと来い!!」 そのとき、山の上からまた激しい音がした。 木々が倒れ、滑り落ちてくるのが見える。 「泉!!」 手を伸ばそうとしたが、 「ッ!」 右肩は動かなかった。 「ーーあ、そうだ」 轟音の中、泉がゆっくりと振り返った。 「これ、返さなきゃね」 そう言いながらポケットの中を漁ると泉は、腕が伸びない辻の代わりに、自分が左腕を伸ばした。 「自分で渡せるよね?」 泉の笑顔は、割れた窓ガラスから流れ込んできた土砂に埋もれ、辻は警察官の手によって後ろに引き倒された。 むせ返るような土の匂いと土石が、パトカーを覆っていく。 「大変だ……!!」 辻を引いた勢いで自らもひっくり返っていた警官は慌てて起き上がると、携帯電話を取り出した。 「土砂崩れ発生!警察車両が一般人を車内に残したまま巻き込まれました!至急応援をお願いします!」 辻は茫然としながら、指を開いた。 そこには、泉に託した、瑠璃への無病息災祈願のお守りが握られていて、 それはまだ、温かかった。
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