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◇◇◇◇ 『これは攪拌と呼ばれ、ごみを均一にするため、かき混ぜる作業です』 柿崎と喜多見は、ごみ処理場の会議室に並んで座りながら、大型モニターを見上げていた。 「―――なんで、ごみ処理場なんか選んだの」 他の生徒に聞こえない声で柿崎は喜多見に顔を寄せた。 「別に。興味があったから」 喜多見はモニターを見ながら、持たされたバインダーに挟んだパンフレットのメモ欄に必死に何かを書き写している。 「ゴミにぃ?」 写す気なんかさらさらない柿崎は、喜多見の手元を見つめながら言った。 「ーーゴミの最期に」 「ぷっ」 思わず小さく吹き出す。 やはり彼は面白い。 『家庭からでたゴミの中には、水分を多く含んだ生ごみのように燃えにくいものと、ティッシュや紙くずのように燃えやすいものが混ざっています。均一に混ぜることで、空気を含んだゴミは燃えやすくなるのです』 大型モニターではもう何が何やらわからないゴミたちが、大型のクレーンゲームようなものでグルグルと掻きまわされていた。 「こうしてみると不思議だよ。混ぜれば混ぜるほどゴミだってわかんなくなる。汚いって思わなくなる」 柿崎がそれを眺めながら適当なことを言う。 人間もそうかもしれない。 本当はどうしようもなく汚いのに、ぐちゃぐちゃにかき回された社会に放たれ、空気を含ませることで汚さを誤魔化し、そして、 ーー全員仲良く灰になる。 「でも臭いよ」 喜多見は柿崎を振り返ると真顔で言った。 「ゴミは臭い。だからやっぱりゴミは汚い」 「…………!」 柿崎は喜多見を見つめて、 「アハハハハハ!」 今度こそ豪快に笑った。
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