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◆◆◆◆
それから柿崎はことあるごとに喜多見に話しかけた。
初めは戸惑っていたクラスメイト達もいつしか柿崎と一緒に喜多見に絡むようになっていった。
気を付けたことは二つ。
①けして喜多見を馬鹿にしないこと。
②ことあるごとに喜多見を誉めること。
当時クラスメイトは柿崎に夢中だった。
その柿崎が手放しで誉め称える喜多見に対しても、だんだん意識が変わっていった。
そこからは喜多見の本領発揮だ。
もめ事が起こった際ーー例えば上級生がクラスメイトの一人を泣かせたり、隣のクラスの数人がいちゃもんを付けてきたときなどに、喜多見は正面切って彼らと戦った。
その眩しいほどの正義感、そして圧倒的な強さは、たちまちクラスメイトを虜にしていった。
「透ー!ゲーセンでプリクラ撮るんだけどいかねえ?」
ある日の放課後、クラスメイトが声をかけてきた。
―――そろそろかな。
「ごめん、今日俺、用事があるんだ」
「なんだー、残念!」
クラスメイトはさして残念そうでもなく、皆の輪の中に戻っていった。
その中心には、喜多見がいた。
―――擦り付け完了。
柿崎はランドセルを引っかけ、教室を去りながら口の端で笑った。
これでガキ大将という重荷からも、リーダーという責務からも全て解放された。
これからはクラスの一員として、自分も喜多見についていけばいい。
ーーなんって、ラクなんだろう。
しかしやっと手に入れた夢のような日々はいとも簡単に崩されることになる。
柿崎ははまだわかっていなかったのだ。
喜多見という男の恐ろしさを―――。
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