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事件は昼休みに起こった。 クラスメイトの男子が、縄跳びで三重とびができると言い張り、教室の端で縄跳びを始めた。 その縄が壁にぶつかり、貼ってあった習字の授業で書いた『飛行』の文字が三枚破れた。 喜多見はその男子を殴り、女子が悲鳴を上げた。 もう見過ごすわけにはいかなかった。 彼はガキ大将には相応しくなかった。 リーダーの器でもなかった。 ただそれだけのこと。 柿崎は椅子を引いて立ち上がると、ツカツカと喜多見に近づき、まだ男子の襟元を握っている喜多見の腕を掴み上げた。 「やり過ぎだろ、喜多見」 「―――透……?」 喜多見は心底驚いたような顔をした。 それはそうだ。 彼を肯定してきたのは自分だ。 彼をリーダーまで押し上げたのもまた、自分だ。 あろうことかそのポジションに彼を追い込んだ自分が、彼を睨み上げたのだから。 「喜多見。お前はリーダー失格だ」
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