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「……やめろよ」
柿崎は、沢渡を殴り続けている喜多見の背中に言った。
小学生でも大柄な方だったが、今はそこに盛り上がった筋肉がプラスされて、さらに大きな背中になっている。
「ーーやめろって……」
銀色の髪の毛。
耳には隙間のないほどのピアス。
容赦なく振るわれる大きな拳に、血管の浮き上がった太い腕。
今ならきっと柿崎がその腕を掴んでも止まらない。
止められない。
それでも、
「ーー喜多見!やめろ!!」
柿崎は叫んだ。
「今、柊麗奈は吉永を喰って腹がいっぱいかもしれない。
ここで死体を無駄に増やしてどうする!1食分の時間が無駄になるだろうが!」
「――――」
喜多見はこちらを振り返ると、ゆっくりと沢渡を離した。
「―――なんだよ、てめえら……!」
沢渡はあふれ出る鼻血を拭おうともせずに、持っていた包丁を翳した。
「マジでホモかよ!気持ちワリイな!!」
言葉と共に飛んだ血しぶきが、喜多見の頬にかかる。
「まあいいや。次に殺されるのはお前だ!喜多見!」
沢渡は包丁で喜多見を指した。
「お前、さっき柊に逆らったもんなあ!?きっと次はてめえだぜ?」
その切っ先が今度は柿崎を指す。
「そしてその次はお前だ。足が化膿して腐ればマズくなる。その前に殺されるだろうよ!肉は鮮度が命だからなぁ!」
「―――ふっ」
柿崎は笑った。
「お前のオツムにしては気の利いたことを言うじゃねえか」
「ひひっ!言ってろ」
沢渡は殴られた歪んだ顔で笑った。
「腹ん中に入ればイケメンも終わりだぜ?」
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