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「……はあ?」
柿崎は半笑いの口をあんぐりと開けた。
ヒーロー?俺が?
純粋に慕ってくる同級生を毛嫌いしていためんどくさがりの俺が?
喜多見に全てを擦り付けようとした俺が?
中学校でも高校でも、操りやすそうな男を適当にリーダーに作り上げた俺が?
ヒーロー?
ーーー嗤わせる。
殴られた方が……
恨まれた方が100倍マシだ。
柿崎は喜多見の短い髪の毛を掴み上げた。
「じゃあ、ヒーローは救わなきゃなぁ?」
「?」
喜多見が眉間に皺を寄せる。
「俺を担いであの枯葉を駆け抜けろよ。下から枯葉が這い上ってきたとしても気合で抜けろ。そうしたら、俺一人くらいは助かるかもしれねえだろうが」
言いながら、言葉の下衆さに嫌気がさして笑いが込み上げてきた。
「――――」
喜多見は無表情でこちらを見下ろしている。
そうだ。
怒れ。
怒れ。
そんでもって俺を殴り殺せ。
枯葉に蝕まれるより、麗奈にしゃぶりつくされるより、その方がずっと―――。
「その手があったか……!」
「え?」
喜多見は柿崎を担ぎ上げると、廊下を走り出した。
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