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◆◆◆◆
「おい……喜多見!!」
叫びたいのに、担がれたことにより腹を喜多見の肩で圧迫されているため、思うように声が出ない。
「冗談だって!やめろ馬鹿!!」
しかし喜多見は迷いなく廊下を進み食堂に折れた。
「だってあいつら……!!」
精一杯振り返りながら食堂の掃き出し窓を睨む。
―――飛ぶじゃん!!
自分は確かに見た。
倒れ込んだ中林の上に覆いかぶさる枯葉たちは確かに空を飛んでいた。
あいつらには羽がある。
もしそこに柿崎を担ぎ上げた喜多見が突っ込んでいっても、どっちも喰われる。
『だずげで!いだいいだいいだいいだいいだい!!』
中林の断末魔を思い出す。
「やめろ……!!やめろって!!」
視界の端に、偶然食堂にいたらしい泉が見える。
驚きながらこちらをただ見上げている。
「泉!!喜多見を止めろおおお!!!」
無駄だとわかっても声の限り叫ぶ。
当然ながら泉は茫然としたまま動かない。
喜多見の足も止まらない。
掃き出し窓を開けると、スリッパのまま外へ出て行く。
「――!!」
柿崎は喜多見の肩に必死に手をつくと、庭を振り返った。
茶色い葉。
中林にまとわりついたあの枯葉だ。
無数の小さな目が、睨んでいるように見える。
無数の薄い羽が、蠢いているように見える。
ーー俺たちを、食べようとしている。
「大丈夫だ、透」
喜多見が荒い息を吐きながら言う。
「もしあいつらがお前にも襲い掛かろうとしたら、俺がお前だけ屋敷の外に放り出す」
放り出す?
俺を投げるってこと?
じゃあ―――お前はどうなる……?
「やめろ……!」
「透」
「やめろって……!」
「――あの日、あのとき、俺に話しかけてくれて」
喜多見は担ぎ上げた柿崎を振り返った。
「ありがとうな!」
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