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夕飯はビーフシチューだった。 他の皆はバケットだったが、白石には特別にライスがついてきた。 皆はご機嫌で準備をする麗奈の気配を窺いつつ、味の感じない夕食を平らげた。 麗奈からは『食事』の話は出ない。 今日は吉永で満腹なのだろうか。 それとも今から問答無用で一人部屋まで引っ張っていくつもりなのか。 喜多見がこちらをちらりと見る。 泉も窺うように横目でこちらを見る。 柿崎は大きく息を吸うと、痛む足を庇いながら立ち上がった。 ナプキンで口元を拭いている麗奈の前に立つ。 「なあに?柿崎君」 麗奈は昨日と同じ一見するとただの女の子にしか見えない笑顔で見上げた。 『ーー生殖本能というのはね……』 泉の言葉を思い出す。 『虫に限らず、いきもの、すなわち生物の種族保存を目的とする本能のこと。 卵ないし子供を産むメスはより遺伝子の強い子供を産むために、優秀で強いオスを探す。 オナガドリは1㎝でも長い尾っぽを持つ美しいオスを探そうとするし、カブトムシは餌場で勝負をし、戦って勝った強く賢いオスとメスは交尾をする』 美しいオス。 強いオス。 そして、賢いオス。 柿崎は麗奈を見下ろすと、白シャツの第一ボタンを外しながら言った。 「今夜のセックスの相手は、もう決まった?」
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