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白いシーツの上に、怪我した足を慎重に滑らせて伸ばす。 冷房が弱く入った部屋は、そこまで温度が低いわけではないのにゾクゾクと寒気がした。 自分に跨る女を見上げる。 「……柿崎君があんな提案してくれるなんて、意外だったな」 麗奈は嬉しそうに上目遣いで見つめた。 夕食を済ませたあと、柿崎が麗奈に提案したのはこうだった。 『より優秀な遺伝子が欲しいんでしょ。手あたり次第セックスするんじゃなくて、俺に絞ったら?』 麗奈を含め、白石、沢渡、辻の4人がポカンと口を開けた。 『頭が良くて、スポーツが出来て……』 柿崎はボタンを外し、ぐいと襟元を引いて、美しい鎖骨と形のいい乳首を見せた。 『イケメンな子供を産みたいでしょ?』 要は精液を提供する代わり、命は見逃してくれ。 そういう提案だった。 もちろんこれは、賭けだった。 一つ目に麗奈が人間なのか化け物なのか獣なのか幽霊なのか、存在が未知数である以上、泉の言うように生殖本能に従って精液を欲しているのかがわからなかった。 二つ目に彼女が欲している精液と自分がもつそれが合致するかがわからなかった。 三つ目に、自分が彼女のタイプであるかもわからなかった。 しかしこれは絶望的な環境下に置かれながら、足を怪我した自分が生き残る可能性のある唯一の賭け。 行動を起こすなら早い方がいい。 自分以上に女にモテる辻や、頭の回転の速い白石が同じ手段を思いつく前に。 ーー俺はこの女の精液要員になってやる。
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