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◇◇◇ 麗奈は長い髪の毛を垂らしながらボタンを外しきった柿崎の胸に手を当てた。 「――緊張してる?」 ―――緊張? してるに決まっている。 そもそも女とこういうことをすること自体が初めてだ。 今までもけしてモテないわけじゃなかったが、中学時代も高校時代も“リーダー”より秀でるのが怖くて遠慮していた。 特に沢渡はモテなかったから、沢渡と共に自分も童貞脱却のチャンスなんてなく――。 だからーーに乗ってしまった。 というか、中林がやる気満々で、自分も乗らざるを得なかった。 百狐祭(ひゃっこまつり)。 うちの高校で昔からある気が狂った祭りで、生徒たちは法被を着て自分で作った狐の面を被って踊る。 「この面を被ったらさ。誰が誰かわかんなくね?」 そう言ったのは自分だった。 「女の子に悪戯しても犯人特定できなそうだよな」 そう口にしたのは中林だった。 「――やってみる?」 そう笑ったのは沢渡だった。 ―――ほんの冗談のつもりだった。少なくとも自分は。 だって誰もいないはずの放課後だった。 そんな戯言も冗談で終わるはずの無人の校舎。 しかし忘れ物でも取りに来たのか、廊下を走る彼女が見えた。 ―――ほんの悪戯のつもりだった。少なくとも自分は。 しかし彼女を空き教室に引きずり込み、黒板に背を付けた柊麗奈の怯えた顔を見た瞬間、自分を含めた3人の何かが変わった。 嫌がる彼女のセーラー服のリボンを引き取った 彼女の白い鎖骨が見えた。 制服のホックを外した。 彼女の薄桜色のブラジャーが見えた。 冷房の切られた教室。 夏休み直前の放課後。 ものすごく、暑かった。 そこからはあまりよく覚えていない。 沢渡が彼女のむき出しにした乳房に吸い付いていた。 中林が頼りないパンティの中に指を入れていた。 「おい」 気が付くと沢渡の狐の面がこちらを睨んでいた。 「お前からヤレよ」 怖気づいて何もできない自分に、彼が命令する。 柿崎は操られるようにチャックを外した。 ズボンが落ちる。 トランクスを少し引き下ろした。 ーーー自分のソレは反応していなかった。 その後、どうなったんだっけ。 そうだ。 廊下から何かの物音がして、 俺はズボンを上げて逃げ出した。 つられるように中林が追いかけてきて、 沢渡が仕方なくそれに続いた。 泣きじゃくった裸のままの柊麗奈をそこに置いて―――。 ◇◇◇
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