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◆◆◆ 朝食を終えた泉は、我先にと食堂を出て行った皆の食器をまとめ流しに運んだ。 「ありがと!」 人間を殺し食べているなんてとても見えない麗奈の笑顔に見送られながら食堂を出た瞬間、ぐいと腕を掴まれた。 「…!!」 そこには白石が立っていて、唇に人差し指を当てていた。 彼の奥にいた喜多見も鋭い視線を投げてくる。 「…………」 2人は食器の後片づけをする麗奈の様子を見ながら、風呂場の方へ泉を連れて行った。 ◇◇◇ 浴槽の前まで来ると、白石は水道の蛇口を捻った。 「やっぱり。柊さんが言っていた水道の調子がおかしいって、この地下水をくみ上げている方の水道だと思う」 白石は捻っても反応のない蛇口を見下ろした。 「この民宿の水源は二つ。直接水路を引いている地下水と、初日に柊さんが言っていた通り、井戸水から手押しポンプで引いている水の二つだ」 あまり眠れていないのだろうか。白石は青白い顔に大層な隈を拵えながら、視線を喜多見と泉に順番に向けた。 「地下水がダメだとなると、井戸水を使うしかない。おそらく柊さんは井戸水から手押しポンプで引いた水を一旦樽か何かに移し、その後バスポンプで吸い取って浴槽に入れようとしてるんだと思う」 白石の言葉を聞いた喜多見が浴槽に上り、高身長を生かして上窓から外を確認する。 「だろうな。この外がちょうど井戸だ」 泉はまだ真意がつかめず、白石と喜多見を見つめた。 「―――これはチャンスだと思う」 白石は無表情で泉を見つめた。 浴槽から下りた喜多見も泉を見下ろす。 「チャンスって……何の?」 泉が聞き返すと、白石はゆっくりと答えた。 「―――柊さんを井戸に突き落とすんだ」
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