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「――感謝してくれよ」
白石は上瞼に黒目を付けるように睨み見上げた。
「実はこの作戦が思いついた時点で、風呂の手伝いをしているお前を犠牲にして逃げるっていう選択肢もあることにはあったんだ」
「…………」
泉はその白石の迫力に思わず後退りをした。
「でも自分で体中にスプレーをかけるのには限界があって、協力者が必要だ。だから喜多見に相談したら、柿崎を置いて行けないって言うから。だから柊さんを井戸に閉じ込める作戦に変えたんだ」
「――――」
泉は喜多見に視線を移した。
彼は当然だという顔で頷いた。
「柊さんを殺すor閉じ込めた上で、全員で逃げる。唯一の案だ。協力してほしい」
白石はそう言うと有無を言わせぬ瞳で泉を見つめた。
「わ……わかった……」
泉は頷きながら芳香スプレーを振り返った。
このスプレーを麗奈に噴きかけたらどうなるのだろうという思想が一瞬脳裏を掠めたが、すぐにふり払った。
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