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◇◇◇ 「柿崎君。多分、寝てると思う」 麗奈は少し悲しそうにこちらを振り返りながら、静かに襖を開けた。 「そっか」 昨夜はそんなにセックスしたのだろうか。 一日起き上がれられなくなるくらいに? 興味がないわけではなかったが、泉は全ての邪念を振り払って襖の隙間から中を覗き込んだ。 布団だ。 この暑い中、きちんと掛布団を被っている。 それだけであればもしかしたら、自分は柿崎の存在を疑ったかもしれない。 しかしここからでも十分見える距離に、柿崎の顔があった。 「ーーーーー」 少し青白いが安らかな顔をして眠っている。 その胸がゆっくり上下しているように見える。 大丈夫だ。生きている。とりあえず、今は。 「あ、忘れてた」 泉は麗奈を振り返った。 「昼食を持ってきてあげようと思ったのに」 そう言うと、彼女は「ああ!」と手を叩いた。 「後で私が運んでおくね」 彼女は微笑みながら今来た廊下を戻り始めた。 「泉君は先に井戸に行っててくれる? 手動ポンプがあってね。それを数回動かして水をきれいにしててほしいんだ。濁らなくなるまで」 「わかった」 手動ポンプという言葉に一瞬身を固くしたが、彼女は気にせず階段を下り始めた。 ーーーザザッ。 「?」 柿崎が起きたのだろうか。 麗奈の部屋から、何か物音が聞こえた気がした。
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