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骨が砕ける、鈍い音がした。 彼女の細い腰が大きくしなり、くの字に曲がった。 それだけでも普通なら致命傷を受けているはずだが、それでも喜多見は蹴り上げた足で踏み切って、今度は後ろ足で麗奈を蓋の開いた井戸へと蹴り倒した。 麗奈の華奢で軽い身体が宙に浮いた。 ―――やった……! 白石がガッツポーズをしながら物置から飛び出したところで、 「……!!」 麗奈の手を掴んでいた泉が、もう一つの手を伸ばし麗奈の襟元を掴んだ。 そして井戸へ落ちようとしていた麗奈を引き上げ、自分もろとも井戸脇に倒れ込んだ。 ―――なんだ……? 何が起きた……? 目の前で起こった珍事に、白石と喜多見は、口を開け硬直した。 今、確かに麗奈は井戸に落ちそうだったのに。 あとちょっとで、自分たちの作戦は成功しそうだったのに。 ーーどうしてこいつは、 ジャマヲシタ……? 白石は、麗奈の下敷きになりながら顔をしかめている泉を見下ろした。 「…………」 麗奈はゆっくり起き上がると、長い髪の毛を前に垂らしながら振り返った。 「―――今、蹴ったのって……どっち?」
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