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◆◆◆◆
辻は腕で口を覆いながら、必死で吐き気を堪えた。
捲った布団。
そこから大量のシデムシが散っていく。
雑に丸められ縛られた毛布は無くなった身体の代わりだろうか。
暑さに吹き出す汗のせいで額に引っ付く長い髪を掻き上げる。
それとは逆に背中を垂れる冷や汗に、身体がどんどん冷たくなっていく。
鼻を刺すような柑橘系の匂いは、傍らに何本も転がっているトイレ用消臭スプレーのせいだろう。
それでも隠しきれない悪臭が部屋を満たしていた。
コレを喜多見に伝えるか否か―――。
「――なあ。どうすればいいと思う」
辻は止めていた息を大きく吐き出すと、柿崎の頭部に向かって小さく呟いた。
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