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◆◆◆◆ とても彼らと一緒に部屋に戻る勇気はなく、そのまま食器洗いを手伝った。 「ーーごめんね、ありがとう」 麗奈が照れたような笑顔を向けてくる。 殺意を持っているであろうあの男たちと、泉の目の前で2人の男を殺しているこの殺人鬼とでは、どちらの方が危険なのだろう。 冷静な判断は出来なかったが、複数対一人である以上、今は麗奈と一緒にいる方が安全に思えた。 「じゃあ、お互いの部屋に戻ろっか」 彼女はエプロンを外しながら泉を振り返った。 内心、誘われたらどうしようかと考えていたが、どうやら杞憂だったらしい。 それはそうだ。 よく考えれば、彼女の部屋では自ら性奴隷に立候補した柿崎が待っている。 そして”食事”である沢渡の死体もきっとそこにある。 泉は“必要ない”。 「あ、うん。お休み」 心細く呟いた泉に、麗奈は微笑んだ。 「喜多見君が怖い?」 「え」 「怖がることないわよ。だって泉君は知らなかったんでしょ?喜多見君が私を井戸に落とそうとしてたことなんて」 「……あ、うん」 ここで頷いておかないと命はない。 喜多見一人に罪を押し付けるようで心苦しかったが、泉は頷いた。 「じゃあ、責められる筋合いなんてないんじゃない?」 「うん。そうだね……」 歯切れの悪い返事をした泉に、 「あのね、泉君。もしよかったら……」 麗奈は恥ずかしがるように俯きながら、着物の襟元を開いた。 「………え」 白い鎖骨が露になる。 寒いのだろうか。それとも緊張しているのか。 ちらりと覗いた彼女の胸元には鳥肌が立っていた。 その谷間に差し入れた彼女自身の手で、見るからに柔らかそうな乳房がプニッと凹む。 ゴクン。 泉は思わず息を飲んだ。
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