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「―――これ、もしよかったら……」 しかし麗奈は胸元からソレを取り出すと、泉に差し出した。 「―――笛……?」 それは赤色のホイッスルだった。 「山菜とか取りに行くときのクマ避けの笛なんだけど。もし泉君に何かあった時はこれを吹いてくれれば助けに行くから」 麗奈は首からチェーンを抜き取り、きょとんと見つめている泉の首にかけた。 「ーー私は、あなたの味方よ……」 その言葉が幼いころの記憶を蘇らせる。 蝉の鳴き声。 “蟻たちのプール”。 麗奈と泉は、 ーー確かに恋をしていた。
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