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「―――え?」 泉は切れ長の目を見つめた。 「だって、僕……確かに……」 「お前が見たのは、喰い残された柿崎の頭部だ。すでに腐敗が始まっている」 辻はゆっくりと頷いた。 「しかもその匂いを隠すために、トイレ用消臭剤が大量に使われた。さっき白石達に聞いたんだが、それを使って屋敷の外に逃げようとしたそうだな」 「――――」 泉は身体を硬直させた。 「まさか……」 「残りは1本。とても4人全員で使える量じゃない」 泉はあまりのことにしゃがみこんだ。 「どうしよう……」 「――――」 「僕のせいだ……!」 辻は仕方なく泉の前に自分もしゃがみこんだ。 「悪いがあまり悩んでる時間はねえぞ。俺は”お前を逃がさないように連れてくる”という名目で部屋を抜けてきてる。そろそろ戻んなきゃいけない」 辻は下を向いている泉の顎をぐいと上げた。 「白石達を選ぶか。柊を選ぶか。今ここで決めろ」 「――――!」 「柊を選ぶというなら止めねえ。あいつらには、柊がお前を無理矢理連れて行ったと伝える」 「……………」 「白石達を選ぶって言うなら、俺が命に代えても守ってやる」 「…………!」 泉は辻を見つめた。 「―――どうして、そこまでしてくれるの……?」 言うと辻は頭を掻きながら首をカクンと前方に折った。 「癪なんだが客観的に見て、今の俺たちの中で、お前が一番生き残る可能性が高いからだ」 「そんな……」 「生き残ったら……お前に頼みたいことがある」 「頼みたいこと……?」 「でもその前に」 辻は視線だけ上げて、長い前髪の間から泉を睨み上げた。 「教えろよ。お前と柊麗奈の本当の関係を……!」
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