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「幼馴染……?」 白石がベッドから足を投げ出しながら無表情で泉を見つめ、喜多見は窓枠に座って外を見ていた。 「僕の家、以前は鶴我川の河川敷のそばにあったんだ。学区とかは違ったけど、その中心にあったクリーンセンターの中庭が近所の子たちの遊び場みたいになってて。そこに、麗奈ちゃんも来てた」 泉は沸き上がる恐怖を抑えるように言葉を重ねた。 「僕は小学3年生のときに引っ越しちゃったからそれから会ってなかったんだけど、高校に入ってからすぐに麗奈ちゃんの方から話しかけてくれたんだけど、僕、照れくさいのもあったし、彼女はあんなに綺麗になってるのに、自分はこんなに変わりなくて。だから結構避けちゃったっていうか。それでだんだん麗奈ちゃんも話しかけて来なくなって。だから最近は全然話したことなかったんだけど」 出てくる言葉の膨大な量に反比例して、泉の顔はどんどん俯いていく。 「近所の友達にいじめられていた僕を、学校も違うのに麗奈ちゃんはよく助けてくれて……その記憶があったから、その、助けようって思ったわけじゃないんだけど、とっさに身体が動いてしまって……。けして彼女に味方するとか、君たちが死んでもいいとか思ってたわけじゃないんーー」 「もういい」 溢れ出る泉の言葉を遮って短く言うと、喜多見は振り返った。 「幼馴染を思う気持ちはわからないわけでもない。昔、自分を助けてくれた奴なら猶更だ」 彼の脳裏に浮かぶ柿崎を想う。 泉が視線をこちらに送ってくる。 ―――本当に言わないの? その目が聞いてくる。 ーーー言わない。 辻は静かに頷いた。 もしも言ったら喜多見は今すぐこの部屋を飛び出して、麗奈を殺しに行くだろう。 そして逆に殺される。 ーーーこいつには隠し通す。何があっても。 「今日のこと。許してやる」 喜多見は泉を睨み落としたまま言った。 「そのかわり、お前が透と替わって来い」
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