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『辻君……?辻君だよね?』
セーラー服を着た麗奈を思い出す。
『私のこと、わかる?』
風に靡く長い髪の毛。眩しいほどの笑顔。
『同じ学校だったなんて、びっくりした~!』
―――柊。……いや、麗奈。
お前は本当に……。
辻は襖を開けた。
―――あの麗奈なのか?
暗闇の中、廊下の照明が帯状に部屋を照らす。
振り返った麗奈の手には、誰のものかわからない腕が握られていて、
血だらけの口のまま麗奈は振り返った。
「―――辻君……?」
白い目。
その中心で黒点が光る。
「どうしたの?」
声は普通だが、あきらかに人間じゃない何かになってしまった麗奈を見て、辻は肩を落とした。
「……麗奈。お前に話がある」
「――――?」
麗奈はこちらを見上げたまま、それでも腕から口を離そうとしない。
「ーーお前は俺に、話すことないのかよ。それとも聞きたくもないってか?」
辻は一歩、和室に入りながら言った。
「元カレの恨み言なんて」
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