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************ 麗奈と出会ったのは、病院だった。 妹の瑠璃は生まれつき肺が弱く、成長と共に何度も手術が必要だった。 予断を許さない中でも、笑顔を絶やさない子だった。 いつも常に高齢の両親のことを考え、高校受験を控えている兄の負担を想い、「毎日来なくていいよ」「心配しなくていいよ」と彼女はことあるごとに口にした。 「馬鹿。お前に会いたいんだって」 そう言って撫でると、彼女の頭はいつも温かくて、 それは彼女が自分が来るまでずっとベッドで横になっていたことを表していて、 本当は身体を起こすのさえ辛いということが分かった。 医者は肺移植を勧めたが、両親はなかなか踏みせずにいた。 それは肺移植5年後の生存率が50%とけして高い数字ではないこと。 そして移植後に生涯続く、免疫抑制剤との戦いが想像を絶するほど過酷だということが要因だった。 拒絶反応を防ぐため、免疫を抑える薬を飲むことで、様々な感染症のリスクを負うことになるという事実が、子供ができるのが遅く、自分たちで長く見守ることができない両親の判断を鈍らせていた。 「だからって今のままで瑠璃が助かる訳じゃないだろ……!」 「俺が生涯、瑠璃を守るから……!」」 辻はなかなか首を縦にふらない両親を説得し続けた。
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