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◇◇◇
辻はアポなしで県外にあるその親戚の家を訪ねた。
変に怪しまれても困るし、何より早く麗奈に会いたかった。
麗奈の伯父に当たるその人物は、辻の来訪を迷惑そうに迎えると、
「ーー麗奈はここにはおらんよ」
苦虫を噛みつぶしたような顔で言った。
「連れてきて数日で消えてしまったんだ。実家に何か忘れ物をしたとかいって。それきりだ」
伯父はため息をつきながら煙草をくゆらせながら、口の端を上げた。
「君、あの子と付き合っていたのか?」
「―――あ、いえ」
辻が短く答えると、
「じゃあ相手はどこの男だろうな」
「え?」
伯父は興味もなさそうに空を仰いだ。
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