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「……!!」 部屋から出たとたん、泉と白石は自分の口を手で塞いだ。 廊下にはおびただしい量の血と肉片の痕が続いていた。 何かを引きずっていた麗奈。 それは、もしかしたら―――。 「ーー辻の死体かもな」 矛盾はない。 喜多見が逃げ出すのを麗奈は見た。 辻がグルだと気づき、怒り狂い、辻を殺した。 確かめなければいけない。 目指すは……。 麗奈の部屋だ。 白石は眉間に皺を寄せ、一直線に痕を付けている血液を跨ぐように歩き始めた。 『もし最悪、喜多見が逃げたのがバレて、彼を追おうとした柊が引き留め、殺されたとする』 白石は先ほどまで、部屋で交わしていた議論について思い出していた。 『その場合は作戦続行だ。喜多見が帰ってくるまで、彼女を刺激しないように身を潜めて救助を待つ』 泉は複雑そうな顔で頷いた。 『しかし、もしそうじゃないなら、俺たちは自力で逃げるしかない』 『そうじゃないならって…?』  泉が不安そうに聞く。 『もし喜多見がすでに柊に捕まった、あるいは殺されたっていう場合だよ』 白石は泉を睨んだ。 『その場合、俺たちは自力で逃げ出さなければいけない。命を懸けて』 それを判断するためには、辻が、喜多見が、そして麗奈がどうなったのかを、見届ける必要があった。 2人は足を忍ばせながら、真っ赤な痕が続く廊下を進んだ。 麗奈が引きずっているのが辻か喜多見の死体だったとして、 何処に運んだんだ……? 白石は眉間に皺をよせた。 部屋より向こうには風呂しかないのに―――。 風呂……。 風呂……? そう言えば麗奈は風呂に異様にこだわっていた。 水道管が壊れたなら、真夏なんだしこんな緊急事態なのだからシャワーだけでもいいはずだ。 それなのにわざわざ井戸から水を汲み、湯を張る必要はあったのだろうか。 白石は舌打ちをした。 今さら考えても仕方ない。 自分は、自分たちは、生き残れるためにできることをするまでだ。 白石は消臭スプレーを握った指に力を入れた。 その時、隣を歩いていた泉が立ち止まった。 「………」 白石も立ち止まり、泉の視線を追う。 「……これは……!」 血液の痕は、階段の上まで続いていた。 つまりは部屋から引きずってきた。 ということは、ーーー辻か? こんな量の出血があったのでは、たとえ奇跡的に助かっていたとしても、もはやダメだろう。 白石と泉は顔を見合わせると、より一層、足音と息を潜め、階段を上り始めた。
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