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◇◇◇◇ 頭の皮も剥がれ落ち、脳ミソがむき出しになった後頭部を見つめながら、泉は息を吸い込んだ。 「泉君……」 麗奈はこちらを見上げながら言った。 「部屋から出ないでって言ったよね……?」 「ひ……ひいい!!」 白石が階段を登ろうとする。 泉はその腕を掴んだ。 「――泉……!?」 「麗奈ちゃん……」 困惑する白石を掴んだまま泉は彼女を見下ろした。 「怪我してるの……?」 「?」 白石が驚いて麗奈を覗き込む。 返り血を浴びて真っ赤に染まった着物では分かりにくいが、確かに彼女の腹からは血が溢れ出していて、そこだけ色が濃かった。 その中心、 ちょうど脇腹あたりには、小型のナイフが突き刺さっていた。 「ーーー、ーーー、ーーー、ーーー」 階段には麗奈の苦しそうな息遣いが響いた。 「ちょっと……ちょっとだけでいいから、大人しくしててくれないかなあ!?」 麗奈は頭を持ったまま、その場に崩れ落ちた。 「……今、回復するから……!」 そう言うと、彼女は持っていた顔に齧り付いた。 「……何を……!?」 白石が後ろでブルブルと震えだす。 「脳みそを……吸ってるんだ」 泉は小さい声で言うと、白石の手からスプレーを奪い取った。 それを震えている彼の身体にかけ、それから自分の身体にもかける。 彼女は脳みそを吸うのに忙しいのか、こちらを見ようともしなかった。 「ーー泉!」 レモンの香りに包まれた白石が、すがるようにしがみついた。 「逃げよう!彼女はすぐには走れない」 泉は全身にスプレーをかけ終わると、白石の手首を掴んだ。 一気に階段を駆け下りると、四つん這いになりながら顔を吸っている麗奈の脇を抜けた。 『―――待ってえ』 麗奈が白い手を伸ばす。 しかし泉は振り返らなかった。 先ほど喜多見が抜け出した窓を再び開け、足をかける。白石もそれに習って窓を飛び越えた。 早く。 早く、外へ……!! その時、 『置いて行かないで!!』 再び屋敷が揺れるほどの悲鳴が響き渡った。 『パパ……!!!!!』 泉は外に飛び出した。 先に降りていた白石が先導して走りだす。 枯葉は群がってこなかった。 それどころかザザッと左右に道を開けた。 二人は庭を走り抜けた。
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