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◆◆◆ 食堂に集まったメンバーは一夜明けた互いの顔を見た。 一晩で何が変わるわけでもないが、沢渡は寝癖のついたまま欠伸をしているし、中林に至ってはうっすらと髭が生えている。 ―――こっちは変わんねえな。 辻は、きちんと身なりを正している白石と、髪の毛の一本一本まで完璧に整えられている柿崎を横目で見た。 「―――ん?」 山田がいない。 てっきり麗奈と共にニヤついた顔で出てくるかと思っていたのに。 「あれ。山田、本当にいねえな」 中林が視線を走らせる。 「あ、そのことなんだけど」 エプロンを巻いた麗奈が、温めたクロワッサンを木製のトングで挟み、それぞれの皿に分けながら口を開いた。 「昨日の夜中ね、塞がった道路の土砂が少しだけ取り除かれてね、バイクが一台ギリギリ通れるくらいの通路ができたんですって。だから本館から職員が来て、一人ずつ連れていくって言ったから、そのときちょうど起きてた山田君にお願いしたの」 「え、じゃあ山田だけ、本館の方に行ったってこと?」 柿崎が目を見開く。 「うん、そう」 麗奈が困ったように微笑む。 「えー、いいなー」 沢渡がだらりとテーブルに突っ伏す。 「まあまあ、沢ちゃん。そんなこと言ったら柊が可哀そうだろ」 柿崎の指摘に、沢渡が大きく口を開けた。 「あ、俺、そんなつもりで言ったんじゃなくて!!」 「ふふ。わかってるよ」 麗奈は笑いながら、今度は平皿にミニトマトを置き始めた。 「柊が作ってくれるご飯は美味しいし、風呂も広くて快適!本館に行ったら先公たちや他の生徒もいて、勉強しなきゃいけない雰囲気だろうし、今のこの状態の方が何倍もいいよなー」 沢渡が焦りながら言い、 「ホントホント。うるせえお袋も親父もいないし、ここに住みたいくらい!」 中林が同調する。 「――――」 斜め前に座った泉が視線を送ってくる。 「ーーー」 辻も送り返した。 「辻君は―――」 いつの間にか麗奈が自分の真後ろに立っていた。 「トマト、食べれるんだっけ?」 「…………!」 その低い声にゾクッと背筋が冷たくなった。 「あ……ああ」 やっとのことで言うと、彼女はミニトマトを三つ、今度は銀色の丸いトングで掴むと、辻の前にあった平皿にを転がした。 ―――なんだ、今の威圧感は……。 辻はもう一度泉を見た。 彼はもうこちらを見ていなかった。 自分の皿に置かれたトマトを見て、眉間に皺を寄せていた。
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