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◆◆◆ 「どう思う」 辻は食事が終わるや否や、麗奈に群がるように皿洗いを手伝う沢渡や柿崎たちの影に隠れるようにして泉を庭に連れ出した。 「どうって……?」 「山田のことだよ」 言うと泉は不安そうに目を逸らした。 「あの後、バイクの音なんてしたか?」 それでも詰め寄ると、泉は気まずそうに首を振った。 「誰かが来た気配なんてしたか?」 「ううん」 泉は曖昧に唸ると首を傾げた。 自分はしばらく眠れず、静かな部屋で耳を澄ましていた。 泉はバナナを食べに行くと言って階段横の食堂に行った。 誰かが来たらいずれかは気づくはずだ。 「本館から迎えなんて、本当に来たと思うか?」 「―――――」 泉は眉間に皺を寄せて辻を見上げた。 「でももし来てなかったとしたら、どうして柊さんは嘘をつくの?」 「山田とヤッたことをバレたくないとか」 「……じゃあ、彼は今、どこにいるの?」 「―――」 そんなのこっちが聞きたい。 どこにいるか。 もし本館からの迎えなんか来ていなかったとして、 山田がこの民宿を出ていなかったとして、 ーー何処にいる? 「―――あ!」 そのとき泉が何かに気が付いたように目と口を開けた。 「ああ?」 振り返ると彼は庭の端の茂みの中に頭を突っ込んでいく。 「あ、おい……!」 彼を追いかけて茂みのところまで行くと、泉はまた髪の毛に蜘蛛の巣を引っ付けながら、茂みから顔を出し、こちらを振り返った。 「これ……」 泉の手に握られていたのは、真新しいニューバランスのスニーカーだった。
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