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宿泊室で勉強をしていると、何やら隣の部屋が騒がしくなった。 男共は皆、柊麗奈の尻を馬鹿みたいに追いかけてうどん作りをしているかと思っていた吉永は、ノートから顔を上げた。 昨夜は沢渡の鼾と、喜多見の歯ぎしりが気になって、勉強に集中できなかった。 日中のうちに今日のノルマを終わらせておきたいのに。 吉永は参考書を睨んだ。 あのとき―――。 バスの中で参考書を掴んでいたことが不幸中の幸いだった。 土砂崩れの際、どさくさに紛れて持ってきてしまったのが功を期して、今こんな状況下におかれても、自分は今こうして数学の勉強をすることができる。 あとは日本語の文を書いて、それを英文に直すだけでも英語の単語力や文法の復習になる。 ただでさえ大事な夏休みだ。 1学期、無能な教師たちが教科書をなぞっただけでは頭に入らない学習内容を、整理して脳みそに入れなおすのに絶好のチャンスなのに。 「一週間も棒に振ってたまるか……!」 吉永は頭を振ると、参考書に視線を戻し、数学I・Aに意識を戻した。 問1) 複数人がそれぞれプレゼントを一つずつ持ちより、交換会を開く。 ただしプレゼントは全て異なるものとする。 交換は次の手順で行う。 『――あんまりジロジロ見て気持ちいいもんでもないけどな……』 手順 ①外見が同じ袋を人数分用意し、各袋にプレゼントを一つずつ入れた上で、参加者に袋を一つずつでたらめに配る。 ②参加者は配られた袋の中のプレゼントを受け取る。 『山田がピアスしてたかって覚えてねえか?』 『あいつら……てかお前もだけど。ジャラジャラつけてるからいちいち覚えてない』 ③交換の結果、一人でも自分の持参したプレゼントを受け取った場合は、交換をやり直す。そして全員が自分以外の人が持参したプレゼントを受け取ったところで交換会を終了する。 5人で交換会を開く場合、1回目の交換で交換会が終了する確率は、□□/□□である。 『みんなに言うのが先か、それとも本人に確認するのが先か……』 テーブルの上でポキッとシャープペンシルの芯が折れた。 問題の内容がさっぱり頭に入ってこない。 「―――ったく!」 吉永は立ち上がった。
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