3

5/7
前へ
/245ページ
次へ
「なんだこれ!!」 吉永は慌ててソレとナイフから手を離し、後ろに飛びのいた。 「蛆虫は産卵されてから一日足らずで孵化し幼虫になる。耳の断面は血液が凝固して外に出て来れなかったんだと思う」 淡々と話す泉に恐怖を覚える。 「そういうこと聞いてんじゃないよ!!なんでこんなに蛆虫が……!」 「蠅の嗅覚は犬並みに優れていて、それは数キロ先の食べ物を嗅ぎ分けるほどだと聞く。シデムシが見つけるくらいだから、蠅はもっと前から見つけて産卵していただろうなって確信があっ―――」 「そういうことを聞いてるんじゃないって言ってるだろうが!!」 吉永の声は、もはや悲鳴に近かった。 白石が吐いた吐瀉物の臭いが、狭くて暑い部屋を覆っていく。 テーブルの上では白いウジ虫たちが四方八方にうねうねと散っていく。 ―――これはただの夢だ。数年に一度見る程度の悪夢だ! 吉永は縋るように辻を見た。 「ーーッ」 彼は喉元まで込み上げてきた何かを、必死で飲み込み苦そうな顔をした。
/245ページ

最初のコメントを投稿しよう!

422人が本棚に入れています
本棚に追加