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「なんだこれ!!」
吉永は慌ててソレとナイフから手を離し、後ろに飛びのいた。
「蛆虫は産卵されてから一日足らずで孵化し幼虫になる。耳の断面は血液が凝固して外に出て来れなかったんだと思う」
淡々と話す泉に恐怖を覚える。
「そういうこと聞いてんじゃないよ!!なんでこんなに蛆虫が……!」
「蠅の嗅覚は犬並みに優れていて、それは数キロ先の食べ物を嗅ぎ分けるほどだと聞く。シデムシが見つけるくらいだから、蠅はもっと前から見つけて産卵していただろうなって確信があっ―――」
「そういうことを聞いてるんじゃないって言ってるだろうが!!」
吉永の声は、もはや悲鳴に近かった。
白石が吐いた吐瀉物の臭いが、狭くて暑い部屋を覆っていく。
テーブルの上では白いウジ虫たちが四方八方にうねうねと散っていく。
―――これはただの夢だ。数年に一度見る程度の悪夢だ!
吉永は縋るように辻を見た。
「ーーッ」
彼は喉元まで込み上げてきた何かを、必死で飲み込み苦そうな顔をした。
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