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「どうしたの、みんな……」 麗奈は驚いたように吉永を見上げた。 「柊さん。あなたの部屋で泉たちが信じられないものを見つけた。なんだかわかるか」 「―――私の部屋で?」 目を見開いた麗奈の後ろで沢渡が笑いながら、遅れて食堂に入ってきた泉を指さした。 「おいおい、泉ちゃん!なーに女の子の部屋に入ってんだよ!お前、意外とムッツリなんだなー?」 「ち、違うよ」 麗奈が慌てて振り返る。 「泉君たちは、私の部屋に入ったゴキブリを退治しようとしてくれてたんだよね?」 麗奈は吉永の後ろにいる泉と辻を交互に見つめた。 「…………」 吉永は振り返った。 泉は無表情で吉永に視線を送り、小さく頷いた。 「――俺たちが見つけたのは」 麗奈に視線を戻す。 「耳だ」 「―――みみ?」 麗奈が小さく口を開けた。 「何言ってんの?」 柿崎が笑う。 「みみって耳?」 中林が馬鹿にするように耳を両手で伸ばしながら笑う。 「そう、耳だ」 吉永は麗奈から目を離さないまま言った。 「血液が凝固してこびり付き、中に数十匹のウジ虫が湧いた、耳だ」 そのグロテスクな表現に、沢渡と柿崎、中林の三人から笑顔が消える。 「なにそれ……。動物かなんかの?」 柿崎が眉間に皺を寄せながら言う。 背中を一筋の汗が伝う。 大きく息を吸い込むと、吉永は柿崎に視線を移して言った。 「いや。人間の物だ。おそらく山田のだと思う」 「はぁ?」 沢渡が顎が外れるほどに口を開けた。 「馬っ鹿じゃねーの?んなわけねーだろ。そんな安っぽい嘘に引っ掛かるかよ!」 中林がその言葉に安心したように下卑た笑い声をもらす。 「ーーお前は黙ってろ」 その時背後から低い声がした。 振り返ると辻が沢渡を睨んでいた。 「―――は?だって……」 長身の辻からにらまれ、沢渡は言い淀んだ。 「見た方が早いんじゃない?」 と、後ろにいた泉が何かを取り出し、それを食堂のテーブルに投げ捨てた。 「……わ!!」 「――うっ!」 ソレを覗き込んだ男たちが、口を押える。 「――沢渡達に聞く。山田はピアスを付けてたか」 沢渡が眉間に皺を寄せ、中林を見る。 中林は口元を抑えたまま、首を傾げる。 すると、 「つけてた……」 柿崎が言った。 「青いの。つけてたよ、あいつ。左耳だけに」 「――――」 吉永は沢渡の後ろから言った柿崎を見上げた。 ジロジロと近距離で覗き込んだ自分たちだから、耳についているのがピアスだと、そしてそれは青色だということがわかった。 柿崎がいるあの位置からでは、到底それは見えるはずがない。 柿崎の言ったことは信用できる。 これは、耳で。 山田の、耳で。 彼は現在、 行方不明だ。 「―――山田をどうした……?柊麗奈。答えろ!」 吉永は麗奈を睨みながら叫んだ。
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