422人が本棚に入れています
本棚に追加
食堂がしんと静まり返った。
素手で持ってきた彼にゾッとしないわけでもなかったが、泉が耳を持ってきてくれて助かった。
沢渡たち3人は現物を見るまで信じなかっただろうし、こと麗奈においても現物を突きつけられたら言い逃れできない。
「うーーーん」
麗奈は着物の裾を止めていたゴムを外しながら、小さく唸った。
「もうここまで見られちゃったら無理か」
結わえていた長い髪の毛も解いた。
袖から覗く白い腕も、長い髪の毛がばらける鎖骨も、全てが完璧に美しい女。
しかし、桜色の唇から出たのは、
「そうよ、それは山田君」
恐ろしい言葉だった。
最初のコメントを投稿しよう!