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「ーーみんなには死ぬまで怖い思いはしてもらいたくなかったんだけど」
麗奈は残念そうに首を傾げた。
「私ねお腹が空いてるの」
「―――!」
皆が目を見開く。
「だからね、1日に人間で言うと一人分、山ウサギで言うと40匹分の食糧が必要」
皆の困惑を無視して麗奈の話は続く。
「それとね、あれもほしいんだー」
「ーーあれって?」
沢渡が呆然としたまま聞く。
「ね、柿崎君?」
麗奈が意味深に柿崎を見つめ、彼は困惑した表情のまま首を振る。
「精液がほしい。それも大量に」
もはや何を言っているのかわからない。
しかし、後ろにいた辻が小さな声で「だからか」と呟いたのは聞こえてきた。
「今まではこの民宿に泊まる男性を食べてたんだけど」
麗奈の視線から解放されて腰が抜けたのか、柿崎が後ろに倒れ込んだ。
「土砂崩れで宿泊するはずだった大学生たちが来れなくなっちゃって。でもあなたたちが来てくれて、本当に助かった」
彼女はそう言いながら嬉しそうに笑った。
「ーーまあ、結論から言うと」
彼女は8人の男にぐるりと視線を走らせた。
「毎日一人ずつ食べていくから、よろしくね?」
そこで吉永は彼女が壁に寄った理由が初めて分かった。
全員を視界に入れるため。
誰かがおかしな行動を起こそうとしたり、逃げようとしたら瞬時に把握するため。
獲物を睨んだ彼女の目は、
嬉しそうに笑っていた。
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