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皆が唖然として立ち尽くしている中で、麗奈はパチンと手を叩いた。 「さ、うどんが冷めちゃうわ!食べましょう!」 彼女はうどんの入ったどんぶりが並んだテーブルを指さした。 「美味しく食べて、美味しくなってね?」 彼女は洒落にならないことを呟きながら、無垢な笑顔を向ける。 ―――さあ、どうする。 もちろんあんな細腕の女子一人に敵わないわけはない。 皆で押さえつければ、いくら彼女さ猟奇殺人鬼であれ、サイコパスであれ、負けることはない。 それでも慎重を期さなければ。 現にあいつは――。 男であり、背も低くなければ華奢でもない山田が、彼女に簡単に喰われたのだ。 慎重にかつ確実に、彼女から逃げなければ。 この中ではまだ頭が回りそうな白石に視線を投げる。 しかし彼は、テーブルに並べられたうどんを見つめ、プルプルと震えている。 ―――どうしたんだ? まさか、うどんに何か……!? 覗き込む。 「―――?」 一見、かき揚げが浮かんだ普通のうどんに見える。 「さあ、みんな、座ってー」 麗奈が声だけ聴くとまるで何ごともなかったように言った。 「―――」 「………」 「――――」 しかし椅子に座るものはいない。 すると、麗奈の口元から笑みが消えた。 『―――座って?』 麗奈のものとは――― いや、女のものとは思えない低い声が、食堂に響き渡った。 今まで半信半疑だった沢渡、中林が一歩退いた。 ―――目が白く光っている。 吉永は彼女の目を見た。 ―――いや、違う。あれは―――。 彼女の眼は黒目が異様に小さく縮んでいた。
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