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◆◆◆
「―――勝った……!!」
結論から言って、吉永は期末の総合で柊麗奈に勝利した。
苦手だった英語を中心に、睡眠時間を削って勉強した。
得意な数学と理科では満点をとった。
それでやっと総合1位。
麗奈との点差はわずか8点だった。
廊下に張り出された順位表を見て、吉永は小さくガッツポーズを作った。
しかし―――。
「やっと解放されたねー」
「今日はカラオケでも行くー?」
そんな馬鹿丸出しの会話が後ろから聞こえてきた。
聞き覚えのある声だった。
中間テストからの2ヶ月間、全神経を注いで聞き分けた声だった。
吉永はゆっくりと振り返った。
そこには、順位表をチラリとも見ずに教室に入ろうとしている柊麗奈があった。
「―――気にならないのか?」
気が付くと、彼女の手首を掴んでいた。
「え?」
彼女は驚いたように、大きな目をさらに見開いた。
「自分の順位が。成績上位者のライバルたちの動向が。気にならないのか?」
吉永が聞くと、彼女は少し引いて、吉永のネームプレートを見ると、「ああ…」と短く発した後、笑顔でこちらを見上げた。
「あまり」
信じられなかった。
「嘘つけ。成績も点数も気になるだろ?それとも大学入試に向けて勉強してるから、期末なんて関係ないか?」
「大学?」
麗奈は眉を上げた。
「私、行く気ないけど。経済的な理由もあって」
「大学に、進学しない……?」
ポカンと口を開けた吉永に、彼女は微笑んだ。
「私はね、楽しいから勉強してるだけ」
「ーーーーー」
廊下を、一陣の風が通り抜けた。
それは文字通り一瞬の出来事だった。
吉永出流は、
彼女の笑顔に恋をした。
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