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その時、外から鋭い悲鳴が響き渡った。 駆け出していたメンバーが足を止める。 「なんだあれ……」 誰かの声が震えている。 「――ヤバいぞ、戻れ!!」 誰かの悲鳴が聞こえる。 たった今飛び出していったばかりのメンバーが食堂に舞い戻ってきた。 喜多見がその騒ぎに振り返り、視界が開けた。 「……な……!?」 掃き出し窓の向こうに見える中林が、枯れ葉のようなものの塊に足を突っ込んでいた。 いや、違う。 枯れ葉はまるで生きているかのように中林の足元から這い上がっていく。 「痛い!!痛い痛い痛い!!」 中林の声が割れる。 よく見ると枯れ葉の間から血が滴っているのが見える。 「助けてくれ……!!」 足を動かせないらしい中林が、必死にこちらを振り返りながら叫ぶ。 一番近くにいたはずの沢渡が、食堂に飛び込み、掃き出し窓を閉めた。 「沢ちゃん……!!」 中林がこちらに向かって手を伸ばす。 その指先までも枯れ葉が這いあがっていく。 「ーーなんだ、あれは……!!」 辻が窓に張り付きながらそれを見ようとする。 「枯れ葉が……人間を喰ってるのか…!?」 白石が柿崎と同じ見解を示した。 「ふふ」 ずっと黙って傍観していた麗奈が笑った。 「そうよ。枯れ葉。この民宿の枯れ葉は生きてるの」 そんな馬鹿馬鹿しい言葉に、笑う者も疑う者もいなかった。 「だずげで!!いだいいだいいだいいだい!!!」 なぜならーーー 皆の目の前で今まさに、同級生が枯れ葉に食われようとしている。 「中林……」 沢渡が眉間に皺を寄せながら友人の最期に成すすべなく立ちすくむ。 「ざわぢゃん……!」 中林の顔が枯れ葉に飲まれていく。 「ざ……わ……ぢゃ……」 その声さえもついに枯れ葉に飲まれていった。 人型をしていた枯れ葉の山が、少しずつ、少しずつ小さくなっていく。 そしてかさかさと周りに散っていき、中林がいた場所には、骨さえも残らなかった。
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