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「――うっ」
辻が口元に手を当て、
「なんなんだよ……」
白石が目を覆ってため息をついた。
「これでわかった?」
麗奈一人が明るい声を出して、皆を見回した。
「家の周りには彼らがいるから。だから逃げられない。それでも出て行こうとするなら止めないけど、でも生きながらにして食べられるのは辛いし、痛いと思うわ」
そう言いながら転がっていた吉永の頭を拾い上げた。
「こうされるより、ずっと……ね?」
彼女は大切そうにそれを抱えると、色を失った顔に頬ずりをした。
目の前にいる喜多見の拳に力が入る。
―――ダメだよ。透。
柿崎は慌ててその腕を掴んだ。
「―――」
喜多見がこちらを振り返る。
柿崎は小刻みに首を振って見せた。
「さて、と」
麗奈はもう一つの手で自分より大きな身体を、ひょいと抱きかかえた。
「悪いけど、うどん食べ終わったら片付けておいてくれる?」
麗奈は笑顔で皆を振り返った。
「私も、ご飯にするから」
そう言うと麗奈は笑いながら、吉永の死体を引きずり、食堂を出て行った。
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