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「どうした?頸動脈をサクッとやっちゃえよ。止めねえぜ。なんなら手伝ってやろうか?」
沢渡はにやにやと柿崎を見下ろした。
「俺、お前のことずーっと嫌いだったんだよな」
そう言いながら沢渡は視線を合わせるようにしゃがむと、その頬をつねった。
「このツラ。妙に整ったこのツラが嫌いだよ」
「―――」
柿崎は沢渡を真っ直ぐに見つめた。
「便所の鏡でもプリクラでもスマホの自撮りでも何でもさ。お前の隣に並ぶと自分が引き立て役になるんだよ。
この綺麗な顔のせいで。このでかい目のせいでさあ!」
震える指で思い切り握られた頬が痛い。
それでも、もうこいつに怖がる必要も諂う必要もない。
柿崎は沢渡を睨み上げた。
「……上に立つのは苦手なんだ」
「は?」
「ガキ大将にはなりたくない。リーダーになりたくない。俺はそんな器じゃないから」
静かに話し出した柿崎に沢渡が眉間に皺を寄せる。
「だから自分の代わりにお前を担ぎ上げてやったんだよ。一番操るのに簡単そうなアホだったから」
「―――はあ!?」
「お前をおだてて木に登らせておいて、過ぎた真似をしたときだけ優しく諭して軌道修正してやる。それくらいのポジションにいた方が楽だったから」
「お前、何言ってやがる……!?」
「自分はさして人気でもないのに、ガキ大将気取れて気持ちよかっただろ?俺が全て脇で操ってやってたんだよ。感謝しろっつの」
柿崎は沢渡の胸倉を掴み上げると、自分に寄せた。
「いいこと教えてやろうか」
「……離せ!」
「おそらく柊麗奈は、あの日、自分を襲ったのが俺たちだって気づいてる。だから教えてあげたんだよ。全て沢ちゃんに命令されてやったんだって」
「――!?」
沢渡が驚きで目を見開いた。
口をついた出まかせだった。
しかしトランクスを指摘されてその可能性にゾッとしたのも事実。
怖がればいい。
自分以上に。
だってあの計画を立てたのは、
沢渡だったんだから。
「これは柊麗奈の復讐なんだよ、沢ちゃん?」
耳元で言い放つ。
「喰われろ、バーカ」
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